オルレアンから来た少女 あとがき

長かった…。量的には中編程度ですけど、週一連載で結局半年近くかかったもんなあ。 毎回ストーリー破綻してないかびくびくしておりました。拙すぎて意味が伝わりきらないところもあるでしょうし、竜頭蛇尾の感もあるし。それでも、とりあえず予定通りの犯人と終わり方ができて作者的にはひと安心です。 最後までおつきあい本当にありがとうございました! 2010・10・09風間銀灰 拝

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オルレアンから来た少女(最終回) 作・風間銀灰

さて、あとはその後のことを少々書いて結末としよう。 田中さんは、美音さんの証言もあって逮捕はされた。ただし、物証もほとんどないから、裁判で無罪になることはありうる。だが、彼は終わりにするはずだった人生を、罪を負って生きていかねばならないのだ。不自由な体と共に…。 美音さんは未成年とはいえ、少年法は改正されたから、自首したといえどもかなりの罰は受けてしまうだろう。二件の殺人未遂、連続殺人の共犯の罪は、決して軽くない。しかし香音さんは、いつでも帰ってこられるよう待っていると言っていた。たった一人の妹だからと。 香音さんといえば、楠がこう言っていた。 「先生、香音ちゃん、お店やめちゃったんですけど、今度は知り合いの喫茶店手伝うんだそうですぅ。そこの制服、メイドさんみたいでカワイイんですよ~」 制服のことはどうでもいいが、まあよかった。香音さんは、見た目よりもずっと強い子なのかもしれない。 そして、連続殺人の二番目の事件の実行犯も逮捕された。関西在住の女性で、三番目の事件の実行犯と交換殺人していたことが判明した。三番目の被害者の元交際相手で、連れ子した息子に暴力を振るわれ、それが原因でその子は視力を失ったという。その復讐のためにこの連続殺人に加わったのだそうだ。 「やりきれない事件だったな…。いや、どんな事件だってそうだが」 私が溜め息をつくと、妻は私を慰めるようにこう言ってくれた。 「でも、あなたのおかげで、二人の命が救われたのよ。それに、まだ被害者が増えるかもしれなかった事…

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オルレアンから来た少女 五章-3 作・風間銀灰

3 「動機は…推測しかできませんが、おそらく香音さん、そうなのではないですか」 私が言うと、田中さんは一瞬私をにらみつけたが、すぐに目を伏せた。 「美音さんの、『お姉ちゃんは生きてたら絶対どこか行っちゃう』という言葉がヒントになりました。…あなたも、香音さんを離したくなかった。 あなたは、ただ香音さんを殺すのではなく、あなたを香音さんが殺し、それをごまかすために連続殺人を扇動し、その結果自殺した、と見せかけるよう、遠大なシナリオを作った。そうすれば、世間はあなたと香音さんの名を永久に結び付けて考える…そう思ったのでしょう?」 彼は相変わらず目を伏せていたが、その唇は強く噛み締められていた。それでも彼は、抵抗を試みていた。 「…本当に馬鹿馬鹿しい。確かに僕は彼女を追い回したけど、それ以上のことをしたという証拠が、何かあるんですか」 やはり認める気はないようだ。できれば、自ら罪を認めてほしかったが。私は呟いた。 「…美音さんが、全てを話してくれましたよ」 今度こそ田中さんの顔色が完全に蒼白になった。 「あなたに命じられた通り、あなたが作った闇サイトを管理したこと、変装してあなたを突き落としたこともね。今ごろ警察でも話しているはずです。ここへも警察が事情を聞きにやってくるでしょう」 「では、あなたは何をしに来たんです?」彼は怒鳴った。「僕を逃がすためではないはずだ。僕はこんな体なのだから、逃げられない。なのに何故わざわざ警察より先にここへ来たのです?」 私は田中…

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オルレアンから来た少女 五章-2

2 彼は─第一の被害者だったはずの─田中さんは、いきなり笑いだした。 「いったい何をおっしゃっているのです?」 また先ほどのような言葉を繰り返してきたが、彼の顔色は相変わらず白かった。 「僕は被害者ですよ。突き落とされたんですよ。あなただって、その現場を見たんでしょう」 「確かに見ました」 「ではあなたの言ってる事は意味を成さないじゃないですか。…まさか、僕がわざわざ自分を突き落とさせたとでも?そんな馬鹿な」 「私はそう思ってます」 「何のために?そもそも、何故そう思ったのですか?」 「理由は…ポケットです」 私の答えに、田中さんは目を見開いた。意外な言葉だったようだ。 「ポケット?」 「犯人の残したメッセージカードは、あなたの着衣のポケットに入っていたと聞きました。それが引っかかったんです」 田中さんは、言葉を発するのをやめて、私を凝視している。 「突き落とす前の一瞬に、カードをポケットに入れることができるとは思えない。ならば事前に入れていたことになる。 あなたに気付かれないように入れることができるのは、あなたの身近な人間か、行きつけの場所の人間ということになる。…だが、もう一つ可能性があるのです」 私は息を吸い込んで、続けた。 「あなた自身がポケットに前以て入れておいた」 「可能性があるから何なのですか」 彼は、ようやくまた口を開いた。 「そして」彼の言葉に構わず再び私は続けた。「あなた以外の人は、ポケットにあらかじめ入れておくことは無意味なのです。あ…

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オルレアンから来た少女五章-1 作・風間銀灰

五章 終章 1 とある病院。私は、受付で面会申し込みをした。 エレベーターに乗り、長い廊下を進み、目的の病室に着いた。そこは一人部屋で、窓からは青い空ばかりが見えていた。部屋の主は、窓側を向いてベッドに腰かけていて、その空をじっと見ていた。 扉は開いていたが、私は一応ノックをした。部屋の主は振り返って、怪訝そうな顔をしたが、何も言わなかった。 「失礼します」 私は頭を下げ、相手の許可を得ることなく室内に入った。 「綺麗な空でしょう」 部屋の主は、私の非礼をとがめることなくそう言って、また窓の方を向いた。確かに空は、悲しみを覚えるくらい済みきっていた。 「…で、どちら様なんです?」 部屋の主は、当然するであろう質問をしてきた。私は自己紹介し、続けて言った。 「あの日、駅に居た者です」 すると、相手の表情が一瞬だけ動いた。 「それはそれは。…もしかして、非常用停止ボタンを押してくれた方ですか?」 「…そうです」 「僕が意識を取り戻した後、医師が教えてくれたんです。電車を止めるのがあと一秒遅かったら、命はなかったって。お礼申し上げなければいけませんね」 「いえ、むしろ私を恨むかもしれません」 私が呟くと、相手は眉を上げた。 「何故です?僕が一生車椅子になるからかもしれないからですか?」 「いいえ、それだけではありません」 一瞬、沈黙が流れた。一呼吸おいて、私は続けた。 「小池美音さんが、自首しました」 「…それが僕に何の関係が?」 そのぶっきらぼうな返…

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オルレアンから来た少女四章-5 作・風間銀灰

5 香音さんは病院に運び込まれ、すぐに治療を受けた。意識は失っていたが、それは睡眠薬のせいで、命に別状はないとのことだった。 我々─私と妻と楠と、そして美音さん─は、廊下で処置が終わるのを待った。 「美音さん、君は…本当は香音さんを死なせる気はなかったんじゃないのか?本当は心のどこかで間に合うように見つけてほしかったから…我々を呼んだのではないのか?」 美音さんはうつむいて黙っていた。 「元々、こんな連続殺人計画がうまくいかないことはわかっていただろう。実行犯の一人が捕まったら、香音さんを黒幕に仕立て上げ、自殺に見せかけて死なせる…そういう段取りだったのだろう。 だが、君はできなかった。君は、どこかでちゃんとわかっていたんだ。香音さんを殺しても何もならないことを。だからまだ早すぎる段階で我々を呼んだ」 美音さんの目から涙が溢れた。 そこへ、看護師が、香音さんが意識を回復したことを伝えに来た。 我々が病室に入ると、香音さんはまだ蒼白い顔を我々に、いや、美音さんに向けた。 「お姉ちゃん…ごめんね…」 そう言って美音さんは、香音さんにすがりついて泣き出した。香音さんは、黙って首を振りながら、美音さんの頭をなで続けた。 美音さんは泣き止むと、振り向いて言った。 「あたし…これから警察に行きます。行って、自分のやったこと、全部話します」 私はうなずいた。 「私が付き添っていこう。…君たちは香音さんに付いててくれ」 妻と楠もうなずいた。 これは後…

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オルレアンから来た少女 四章-4 作・風間銀灰

4 私は思わずまた美音さんの瞳を見つめた。しかしその瞳に、狂気の影はない。 「聖女…?」 私の呟きに、彼女はこくりとうなずく。 「清らかに生きてきた人は、死んだら聖女になるの。そして、ずっと見守ってくれるの」 「馬鹿を言っちゃいけない」私は囁くような声で言った。「生きていた方が、たくさん話せる。たくさん助け合えるだろう」 すると、美音さんは突然激しく首を振った。 「違う!お姉ちゃんは、生きてたら絶対どこかへ行っちゃう!あたしたち大人になったら、離ればなれに…そんなのイヤ!」 泣き叫ぶようだった彼女の声が、再び穏やかに、どこかうっとりした口調に戻った。 「だから」夢見るような声。「だから、あたしを置いていってしまう前に、聖女になってもらうことにしたの」 死んだら聖女に…。その意味に思い当たって、私はぞっとした。 「美音さん、香音さんはどこだっ!」 思わず彼女の肩をつかんで揺さぶったが、かみ合わない答えが返ってきた。 「お姉ちゃんは死体になってもきっと綺麗なの」 埒があかない。だが、今の言葉に私はわずかに光明を見い出した。 「…君がどんな方法で香音さんを死なせようとしているか知らないが」声を荒げないよう、うわずらないよう必死で呟く。「無理に命を断たれた人間は、どのような方法を取ろうと、美しい死体になるなんて決してあり得ない」 私の言葉に、美音さんはかすかに動揺を見せた。 「苦痛のある死なら、表情に恐ろしい苦しみを残すし、たとえ苦痛のない死でも、弛緩した筋肉が…

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オルレアンから来た少女 四章-3 作・風間銀灰

3 しばらく時が止まったかのような沈黙が流れた。 「ど…どうしてあたしが…」 ようやく美音さんがかすれ声で呟くと、私もやっと口を開いた。 「以前会った時、君は『お姉ちゃんはピンクは決して身に着けない』と言った。実際香音さんはモノトーンの服を着ていたし、その際君の言ったことを否定しなかった。 あの時に二人ともわざわざ嘘をつく理由がない。ということは、今の方が嘘ということになる。…このピンクのパソコンが香音さんの物である、ということがね…」 「そんな…確かにあたし、そういうこと言ったかもしれないけど、服装だけでパソコンはたまたま違ったんですっ。…パソコンに関しては色にこだわらなかったから…」 「それなら」私は呟いた。自分の考えを喋るのが辛かった。「君のパソコンを起動して見せてもらおうか」 また沈黙。 「どうして見せなくちゃなんないんですかっ」 しばらくして美音さんが挑戦的に返答し、私もややきつい口調で返した。 「見せられない理由でも?」 すると美音さんは口を固く結んで、黒いノートパソコンを起動した。 表れた画面は…データを全て消された、何もない状態。 「データを復旧すれば、おそらく香音さんのパソコンであることが証明されるはずだ」 私は言って、美音さんを振り返った。 「君のパソコンらしく見えるよういろいろ細工する前に、我々を呼んだのは失敗だったね」 美音さんは唇を噛み締めてうつむいた。 「だが、パソコンを入れ替えるということ自体は、単純だが見事な発想だ。…

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オルレアンから来た少女 四章-2 作・風間銀灰

2 そんなまさか。そんなはずは…。美音さんは、手の甲で涙をごしごしこすりながら、我々に部屋に上がるよう促した。 少し落ち着いた美音さんは、卓上にあったノートパソコンを開き、言った。 「お姉ちゃんのパソコンです…。これ、見てください…」 そのノートパソコンは、若い女の子の好きそうな、ラメ入りとか言うらしいピンク色の可愛らしいものだった。しかし、中に記されていた内容は、その可愛さからはるかにかけ離れたものだった。 『オルレアンから来た少女』のサイトで知り合った女性たちとのやりとり。もう我慢できない、あんな奴が生きてるなんて耐えられない、いっそ殺してしまいたい。そんな数々の声に答えるかのように、それは一つの文章から始まっていた。 『我々は神からお告げを賜った。この世界から消し去りなさい。人間の皮を被った汚れた獣たちを。…と。』 一見幼稚な狂信者の戯言のような文がところどころに挟んではあったが、計画そのものは冷酷かつ理知的なものだった。そう、このパソコンに記されていたのは、大がかりな連続殺人の計画だったのである。 まず『神の使い』が第一の事件を起こす。その後はこの『選ばれし者たち』の中で、順次交換殺人をしていけばよい。メッセージカードは、殺害対象の罪悪に合わせて『神の使い』が作り、プリントアウトできるようにしておく。 別のページを開くと、そのカードのもとがあった。おなじみの三つの文面の他にも、これから実行される予定だったのか、十種類ほどの文面があった。 「そんな……

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オルレアンから来た少女 四章-1 作・風間銀灰

四章 身代わりの羊ではなく 1    ● 彼の女(ひと)は、清らかに死せることによってより聖なる存在となる。手をかけることをためらうなかれ。 ● 私と妻は、とりあえず急いで家を出、間もなく楠と合流した。 「どうしたんだ。いったい何があったんだ」 楠の顔を見るなり尋ねると、彼女は泣きそうな顔で答えた。 「わかんないんですぅ。香音ちゃんから着信あったと思って出てみたら、美音ちゃんの声で、すぐ来てって」 先ほどの話の繰り返しになりそうだったので私は慌ててさえぎった。 「それより、二人のご両親とかはどうしているんだ。一緒に住んではいないのか」 「それが…」 楠は泣きそう顔から困惑顔に変わって答えた。 「香音ちゃんたちのおとーさんおかーさん、二人とも数年前に亡くなっているんですぅ。で、香音ちゃんと美音ちゃんは親戚の家で暮らしてたけど、最近になって二人で暮らし始めて」 ということは、美音さんは頼れる人がほとんどいないのか。と、ここで、妻が遠慮がちに口を挟んだ。 「…何があったかわからないけれど、警察にも報せた方がいいのかしら?」 すると、楠が首を横に振った。 「そう言ったんですぅ。そしたら、美音ちゃん、そんなコトしないでとにかく来てって…。だからとにかく、香音ちゃん家へ行ってみましょう」 我々は頷き、急ぎ足で歩き出した。 こんな時は、電車もタクシーもものすごくゆっくり動いているように思える。じりじりした思いで移動し、その間楠にもう一度電話をかけさ…

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