オルレアンから来た少女 一章-1

一章 スプリングコートの女 1 ● 我々は神からお告げを賜った。この世界から消し去りなさい。人間の皮を被った汚れた獣たちを。…と。 ● 私はあくびをかみ殺した。新緑の季節、連休ボケで、私も、そして学生どももいまいち集中力に欠けた雰囲気になっている。新学期の緊張感も、授業選択のどたばたも落ち着き、ちょうど皆の気が緩む時期な…

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オルレアンから来た少女 一章-2

2 もちろん学食の隅でも平和と安息は望めなかった。今の授業の傷心の原因になった奴らが近付いてきたからである。ならば研究室にこもってしまえばよかったのではないか、と思われる御仁もいるだろうが、研究室に居れば居たで、そこに押しかけられるだけだ。いやむしろ、冷蔵庫の中をあさられる分、もっと状況は悪いのだ。 そんな訳で、私は諦めの吐息をつき、コーヒーをすすった。 「セーンセ…

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オルレアンから来た少女 一章-3

3 「で、そのストーカーってゆーのがぁ…」 と楠が話し始めたところで、またもう一人招かざる奴がやってきた。 「ストーカー?鳴戸のコト?」 「大海原クン、人のこと言えるっスか?」 新たに現れたこの大海原という男、鳴戸と同じ理工学部の学生で、ひょろひょろであるという点を除けば、鳴戸の全くの同類と言ってよい。実際この二人、よくセットで登場する。つまりこいつも、私の頭痛…

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オルレアンから来た少女 第一章-4 作・風間銀灰

4 そんなこんなで、ものすごい疲労感を引きずりつつ、なんとか本日の残りの授業を終え、やがて帰宅の時間となった。今日は妻が夕食を作ってくれる日である。彼女のおいしい手料理を食べて、気分を変えるとしよう。 そう思っていたのに、通用門のところでばったりと、よりによって楠と田沢と大海原に会ってしまった。せめて明日まで忘れていたい面々だったというのに。 「あ、先生も今帰りです…

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オルレアンから来た少女 一章-5 作・風間銀灰

5 その後の記憶は、欠け落ちたりはしないがやはりどこか夢の中の出来事のように曖昧になっていた。…これまでの死者を見つけてしまった経験の時と同じように。 電車は当然運行を止め、駅係員が集まり、鉄道警察がやって来た。 しかし不幸中の幸いと言うべきか、運転士の急ブレーキで、被害者の男性は、命は落とさずに澄んだという。但しすぐに病院に搬送されたが、生死の境の危険な状態にあ…

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オルレアンから来た少女 二章-1 作・風間銀灰

二章 メッセージ・カード 1 ● 恐れるな。そなたらが始末する獣たちは、死ぬことで神の意志を伝える、崇高な犠牲へと昇華するのだ。 ● 私が遭遇した駅での事件は、思いもかけぬ展開となった。通常の鉄道事故なら、新聞の社会欄に小さな記事が載る程度であったろう。だが、被害者のポケットに入っていた一枚の紙切れが、全ての事情を変えてしまった…

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オルレアンから来た少女 二章-2 作・風間銀灰

2 とりあえず今週末、当初の予定通り香音さんに会って話を聞くことになった。被害者のことをよく知るためだ。 「場所は~、うちの店でいいですかあ?」 「断るっ」 楠の提案を私は即座に却下した。何が悲しくていい歳のおっさんが、メイド喫茶に行ったうえそこでストーカーやら殺人やらの話を聞かされなくてはならないのか。それだけは絶対に避けたい。 「…せめてうちの学食にしてくれ」 私…

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オルレアンから来た少女 二章-3 作・風間銀灰

3 そして約束の週末がやってきた。平日とはうってかわってがらんとした学食で、私と、そして招かれざる学生どもは、楠が香音さんを連れてくるのを待っていた。 「香音さん、どんな娘(こ)っスかね~。楽しみっス」 鳴戸が鼻の下を伸ばしてでれでれしていると、すかさず田沢の辛辣な言葉が発せられた。 「本当に鳴戸君は幸せな方ですこと。メイド喫茶でお仕事されてる女性が来る、それだけでテンシ…

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オルレアンから来た少女 二章-4 作・風間銀灰

4 「初めは、とても優しい人だったんです。優しい人だと思わされたのかもしれませんけど。それが、だんだん…」 香音さんのアルバイトに難色を示すのはまだ理解できる範囲だったのが、彼女が誰かと話したり、果ては帰宅することにさえ不機嫌を示すようになったそうだ。自分の側から片時も離したくない。愛情表現にしても、度が過ぎていた。 他にも様々なことがあって息苦しさを覚えていた香音さん…

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オルレアンから来た少女 二章-5 作・風間銀灰

5 そもそも香音さんが彼と知り合ったきっかけも、彼が店の常連だったというところからだそうだ。残念ながら、これ以上聞けることはなさそうだった。 ひと通りの話が途切れると、楠が急に立ち上がって言った。 「じゃ、お話済んだトコで、ケーキタイムにしましょ~。香音ちゃん、美音ちゃん、ここのケーキ、けっこうおいしーから、いっぱい食べてって~。もちろん先生のおごりですぅ♪」 それを聞い…

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