冬桜 三の二 作・風間銀灰

日差しが照りつける、とても暑い日だった。彼は、ねえやに負われて─今にして思えば、彼女は医師の孫娘よりももっと幼かった─外に連れ出されていた。おそらく、幼児が家に居ては邪魔な何かがあったのだろう。
最初のうちはおとなしくしていたが、暑かったためか、やがて彼はむずがり出した。どうしてそうなったかは、今となってはさっぱりわからない。ただ覚えているのは、急に何もかも腹を立てたくなった、あの爆発的な思いだけだ。
当然ねえやはおろおろし出して、懸命に揺すったり、跳ねたり、歌を唄ったりした。どれも駄目とわかると、彼女は、ふいに道端にしゃがみこんでこれまた泣き出した─背中の子供よりも激しく。それに驚いて泣き止んだのだった。その日まで、自分以外の誰かが泣くことなど思いもよらなかった。そして背中から降りて、ねえやの前にしゃがみこみ、泣きじゃくっている様子を見ていた。見ているしかできなかった。
しばらくして、ねえやもようやく泣き止んだ。そして、とても恥ずかしそうに笑った。それから彼女は、その辺に生えていた草の茎と、細い葉で、器用に風車を作った。
坊はいい子に泣き止んだから、これをあげます、と言って、風を受けて廻るのを渡してくれた。そして、一転して楽しげに笑う子供を見て、ほっとした顔をした。
~続く~

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