田植えのときに人が死ぬ(最終回)

超越の言葉に、全員がものすごく驚いた。そして、中でも一番驚いたのは…私だった。
「で、でも、どーして…」
「弥生初期の田はね」超越は説明を始めた。「湿地帯に直接種籾をまく、いわゆる直播きなんですよ。水路で水を流すわけじゃないし、水量もたいしたことないから、足跡残っても不思議じゃないんです。収穫期だって、乾いてなかったでしょうし。」
「で、でも、真ん中辺りで足跡なくなって…」
「板でも置いて、それ踏み台にして飛び出たんでしょ。ずぶずぶ歩くよりラクだってその時気付いたんじゃないですか。」
こうして、<事件>はあっけなく片付いてしまった。がっくりしている鳴戸に、私はからかうつもりで言った。
「ま、そうがっかりするな。案外また『本物の』事件がやってくるかもしれないぞ。」
冗談で言ったこの言葉が、まさか後日本当になってしまうとは…。そのときは、知る由もなかったのである。

田植えのときに人が死ぬ・完

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