オルレアンから来た少女 二章-3 作・風間銀灰


そして約束の週末がやってきた。平日とはうってかわってがらんとした学食で、私と、そして招かれざる学生どもは、楠が香音さんを連れてくるのを待っていた。
「香音さん、どんな娘(こ)っスかね~。楽しみっス」
鳴戸が鼻の下を伸ばしてでれでれしていると、すかさず田沢の辛辣な言葉が発せられた。
「本当に鳴戸君は幸せな方ですこと。メイド喫茶でお仕事されてる女性が来る、それだけでテンション上がるのですもの」
「俺もテンション上がってま~す」と、これは大海原。
「田沢さん、ひょっとして妬いてくれてるっスか?いやあ、かねがね田沢さんはツンデレだと思ってたっスよ」
鳴戸の言葉に、田沢は口元をひくつかせて呟いた。
「…超越君、お得意の空手でこのお二人に軽くお仕置きして頂けませんこと」
超越が返事をする前に、向こうから楠の独特な声が聞こえてきた。
「先生~、みなさぁん、お待たせ致しました~。香音ちゃん連れてきましたよ~」
声の方を見ると、楠の他に、若くて可愛らしい女性が何故か二人居た。
「香音ちゃんと、香音ちゃんの妹の美音(みね)ちゃんですぅ」
香音さんは、やや小柄で色白に大きな黒い瞳の、どことなく儚さを感じさせる少女だった。モノトーンだが女性らしい服装のせいか、なんとなく聖らかな修道女を思わせた。
妹さんの方は、香音さんより背が高く、元気で生き生きとしていて、明るい色のシャツやミニスカートを颯爽と着こなしているのが、姉との対照を感じさせた。
「小池香音と申します。今日はお時間割いて頂き、申し訳ございません」
香音さんはもの静かな美しい声で挨拶し、深々と頭を下げた。
「妹の美音です。今日はお姉ちゃんが心配でくっついてきちゃいましたっ」
美音さんはテレくさそうに言ってぴょこんと頭を下げた。まだ高校生だそうだ。女子高生の妹さん付き!と、鳴戸と大海原の二人の馬鹿は大いにはしゃいでいる。放っておこう。
こちらの紹介もなんとか済み、改めて席に落ち着くと、さて何から話すべきか、と私は少しためらった。とりあえず、思いついた事を口にしてみた。
「…事件のことは、さぞかしショックだったでしょう。思い出させて申し訳ないですが、田中さんについてできるだけ教えて頂けますか」
これではまるでドラマの刑事のようなセリフだ。しかし、香音さんは素直にこくりとうなずくと、ゆっくりと話し始めた。
続く

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体に一切関係ありません。

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